
手元供養とは
手元供養とはお骨を墓地や納骨堂に納めることなく自宅に安置し供養をすることを言います。全部のお骨を安置する場合と一部のお骨を分骨してもらい安置し供養する場合があります。どちらも墓地・埋葬に関する法律の観点から違法ではございません。
全部のお骨もしくはお骨の一部を永遠と手元供養するのであれば行政上の法的手続きは必要ありません。しかし、いつかどこかに納骨する可能性があるのであれば墓地・埋葬に関する法律にそって手続きをする必要があります。
ここでは手元供養で知っておきたい重要な3つの法律についてご説明致します。
手元供養で重要な法律1・【墓地以外にはお骨を納骨することができない】
墓地、埋葬等に関する法律、第4条1項
【埋葬又は焼骨の埋蔵は墓地以外の区域にこれを行なってはならない】
とある。
埋葬とは死体を(妊娠4ヶ月以上の死胎を含む)土中に葬ることを言う。いわゆる土葬のことである。日本に置いては99%のご遺体が火葬場で火葬されることから、手元供養で重要な3つの法律サイトの中では焼骨(火葬場で火葬されたお骨)の埋蔵を中心に説明をしたいと思う。
そもそも埋蔵とはどういう意味か?
墓地、埋葬等に関する法律の中には埋葬については明確な説明があるが、埋蔵については特に説明がなされていない。しかし関連する法律から察するに焼骨を埋蔵するとは、
お骨を墓地内のお墓に納める又は墓地内の土中に穴を掘って埋めることと解釈できる。
裏を返せばお骨を墓地以外の場所に埋蔵しなければ法律に触れることがないということである。
これが手元供養の根拠となる。
お骨をすべて、もしくはお骨の一部を自宅に安置し手元供養をする事には何ら問題がないのである。ただここで一つ注意しなければならないことがある。
それは、お骨を永遠に自宅に置き手元供養ができるのかということである。
いつかは、どこかの墓地にお骨を納めなければならない可能性がでてくるのなら必要となってくるのが、
お骨全部を手元供養している場合は火葬許可証、一部のお骨を分骨して手元供養している場合は分骨証明書である。
手元供養で重要な法律2【分骨をする場合には分骨証明書は必ず取得しておく】
墓地埋葬等に関する法律 第14条1項
【墓地の管理者は、埋葬許可証、または火葬許可証を受理した後でなければ、埋葬または焼骨の埋蔵をさせてはならない】
とある。(埋葬許可証は土葬の場合の許可証であるから今回も説明を省略する)
簡単に言えば火葬許可証がなければ墓地に納骨できないということである。
通常は死亡届を提出した市長村長が火葬許可証を発行してくれるので、その許可証を墓地管理者に提出してお墓に納骨することになる。
お骨全部を手元供養するのであれば、お骨を墓地に埋蔵するわけではないので火葬場で火葬した後は火葬許可証は必要としない。しかし、いつかどこかの墓地もしくは納骨堂にお骨を納めなければならない可能性があるならば火葬許可証は捨てたりせずに大事に保管するべきである。
また、お骨の一部を分骨として手元供養する場合にも
- 墓地、埋葬等に関する法律第五条2項に
【焼骨の分骨を埋蔵し、又はその収蔵(納骨堂にお骨を納めること)を委託しようとする者は、墓地等の管理者に、前項に規定する書類を提出しなければならない】
(前項に規定する書類とは墓地の管理者は焼骨の埋蔵又は収蔵の事実を証する書類、火葬場の管理者は火葬の事実を証する書類)とあるように分骨したお骨を墓地に納骨する場合もしくは納骨堂に収蔵する場合には分骨証明書が必要となる。
手元供養で重要な法律1・2のこれまでをまとめると自宅に全部のお骨または一部のお骨を分骨して手元供養をする事には法律上なんら問題がない。ただし最終的に墓地もしくは納骨堂に納める可能性があるのであれば、ご遺体を火葬したときに発行してもらった
火葬許可証は大事に保管し、お骨の一部を分骨するのであれば分骨証明書をきちんと発行してもらうことが重要だ。
火葬許可証または分骨証明証がなければ墓地、納骨堂にお骨を納めることができないからである。
- 分骨証明書はどこで発行してもらうか
それでは、分骨証明書をどこで発行してもらうか。
これには2つのパターンが想定される。
パターン1として、すでにどこかの墓地のお墓に埋蔵、納骨堂に収蔵されている場合には、お墓の管理者、納骨堂の管理者となる。寺院の墓地、納骨堂であれば、そこを管理しているお寺、市町村で管理している墓地、納骨堂であれば、役所である。
手元供養の場合、次のパターンが多いと思う。
火葬場で火葬が終わった後に分骨をする場合である。この場合は火葬場の管理者から分骨証明書を取得することになり火葬の申請と分骨証明書の発行を併せて請求をする。
2つに分骨するのであれば、分骨証明書は2通、3つに分骨するのであれば分骨証明書は3通となる。
- そもそも分骨とは
分骨とは、焼骨(火葬場で火葬を行ない、遺族等が骨揚げしたお骨)の一部を墓地、納骨堂に移すことをいう。
手元供養のように分けたお骨の一部をお墓に埋蔵、納骨堂に収蔵する事がなければ厳密には分骨とはいわない。もちろん分骨証明書も必要ない。
ただ何度も言うが手元供養で供養をしていたお骨を最終的にどこかのお墓、納骨堂に納める可能性があるのなら、分骨証明書を取得し保管をしておくのが良いだろう。
火葬許可証または分骨証明証がなければ墓地、納骨堂にお骨を納めることができないからである。
手元供養で重要な法律3【分骨をする場合には祭祀継承者の許可をとる】
お骨は誰のもの
祭祀継承者(さいしけいしょうしゃ)とは聞き慣れない言葉である。
簡単に言ってしまえば、亡くなった方の葬儀を執り行い、その後の供養をし、お墓を管理する人のことを言う。
難しく言えば祭祀財産を引き継ぐものである。民法897条では祭祀財産として1・【系譜】家系図や過去帳2・【祭具】位牌・仏壇・仏具・神棚など3・【墳墓】墓石・墓碑・埋棺(土葬の時に遺体を入れる棺)墓地の使用権などの3種類をあげている。お骨はこの中に含まれてはいないが民法の解釈上祭祀財産とされている。
つまりお骨は祭祀継承者のものといえる。
自分が祭祀継承者であれば自由に分骨ができるが、そうでなければ手元供養のために分骨してもらうには祭祀継承者の許可をもらわなければならない。
ちなみに祭祀財産は相続の対象とはならない。これは、祭祀財産が共有や分割相続に適さないと考えるからである。
相続の対象にならないため相続人が必ずしも祭祀継承者とはならない。
現祭祀継承者が他人を祭祀継承者に指定することも、法律上問題とはならないのである。
ただし、墓地規定の中で納骨を許可する範囲が規定されている場合はそれに従わなければならない。
用語説明
埋葬・死体を火葬しないで墓地に埋めること。土葬のことである。
埋蔵・火葬場で火葬したお骨を墓地のお墓に納骨、もしくは墓地内に穴を掘って埋めること。
収蔵・納骨堂に火葬したお骨を納めること。
仏像の中にお骨を納める手元供養
手元供養には全部のお骨を自宅に安置する場合とお骨の一部を自宅に安置する場合の二通りが考えられる。
ここではお骨の一部を仏像の中に納める手元供養をご紹介したいと思う。
胎内舎利仏(たいないしゃりぶつ)という13㎝ぐらいの小さな仏像の中にお骨を納める手元供養がある。
胎内(たいない)とは仏様の体の中をあらわし、舎利(しゃり)とはお骨のことである。
亡くなった方のお骨を仏像の中に納めることによって、その方は胎内舎利仏として、常に寄り添い、見守ってくれるという。お仏壇に入れっぱなしではなく、食事の時はテーブルに置いて一緒に食事をしたり、コーヒーを飲みながら沈黙の会話を楽しんだり、旅行に一緒に連れ出しても問題はない。アクティブな人は、お仏壇は必要ないかも知れない。
心理学では、このようなコミュ二ケーションを存在のコミュ二ケーションと言うらしい。物も言わず、動きもせず、感情もあらわさないが、お顔をじっと見ていると何かが伝わってくる。その伝わってきたことに言葉を返し、感情が動き、行動をしている自分がいる。
生きていたとき以上に深いコミュニケーション。
不思議な世界だ。